企業でワークする哲学者たち

2010年頃から「企業内哲学」と呼ばれる国際的動向が前景化した。2025年現在、日本でも、企業内哲学者、ひいては哲学コンサルティング会社が幾つか散見される。企業への「哲学対話」の導入事例を含めると、そうした組織や個人をさらに数え上げることができるだろう。

本研究会は、この動向にかんする継続的調査をおこなうものであり、そのプロセスにおいて同時に三つの機会を提供することを目指している。すなわち、当該の実践者が自分自身の実践を省察する機会、この動向の一般的理解を進める機会、そして、哲学という営みの今日的意義を考察する機会の三つである。

研究会は、毎月最初の水曜夜にオンライン (Zoom) 、多様な参加者に開かれた仕方で実施されます。初回の参加希望は、申込フォームから。

スケジュール

6月4日 (水) 20:00-21:30 企業内哲学概論(参加申込フォーム

企業内哲学の動向全般について概説する。論文「企業内哲学者はいかなる意味で哲学者であるのか:企業哲学実践とその批判」(佐々木, 2024)の第2・3節を中心に扱うが、本論文では扱われていない他の資料や、2025年現在までの国内での進展状況についても言及する。

7月2日 (水) 20:00-21:30 CPO概論

ドイツとアメリカには「チーフ・フィロソフィー・オフィサー」と呼ばれる企業内哲学者の一群がいる。何をやる役職なのか?そもそも哲学者は企業における一人のチーフ(長)であるべきなのか?ニーチェを専門とする経済哲学者 S.E.シュスターがまとめた Chief Philosophy Officer (2023) に基づき、CPOの動向を整理し、論点を提示する。

8月6日 (水) 20:00-21:30 企業で働くプラトン

プラトンの心理学的次元に関する研究で博士号を取得した F. ロシュは、オペレーションマネジャー、コンサルタントー研修講師、組織論の哲学研究者という三つの顔をあわせもつフランスの企業内哲学者でもある。彼が提案するプラトン主義的教育学の見地からの企業内哲学の方法論 (Roche 2010) を概説・検討する。

9月3日 (水) 20:00-21:30 ブラバンドルの箱

L.D ブラバンドルは、ボストン・コンサルティング・グループのCPOを務めた経歴をもつベルギー人哲学者である。彼は、ビジネスパーソンが暗黙的に囚われている前提に気づき修正するためのメタ概念としての「箱 box」を生み出した。ここではブラバンドルの「箱」概念に着目し、その内実と妥当性を探る。

to be continued…

コラボレーター

  • 佐々木 晃也

    大阪大学大学院人間科学研究科

    専門は哲学。不条理(存在の無価値さ)に立脚した価値(観)や倫理に関心を持つ。対話の科学的研究、求人業界でのビジネス業務、株式会社メタでの監査役などを経て、現在、大学院での研究の傍ら、国内外の「企業内哲学」の動向にかんする調査研究を進めている。

  • 堀越 耀介

    東京大学UTCP

    専門は教育哲学。哲学対話を理論的に研究する傍らでその実践活動にも従事。近年では特に、企業での哲学実践にかかわっている。個人として、民間企業のアドバイザリー(NECソリューションイノベータ)を務めるほか、複数の哲学系スタートアップ企業の立ち上げにかかわる。

  • 濱田 力稀

    大阪大学大学院人間科学研究科

    専門は20世紀フランスの哲学者フェリックス・ガタリ。株式会社クララならびに地域活性団体のいしばしコモンズで相談役を兼任。哲学を実践するとはいかなることか」の研究を軸に、ドイツを主とした「企業内哲学」の調査を行なっている。

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